これまで見てきたように、GIGAZINE編集部で記事を作るのが編集部員の主な仕事になるわけですが、「記事を書く」というのは普通の文章を書くのとはいくつか根本的に大きく違っていることがあります。
中でも最大の差は「読者の数」です。あなたは今まで何人の前で発表をしたり、話をした経験がありますか?教室の前で発表したのであれば数十人、学校の集会などであれば数百人、もっと大きな発表会でも数千人レベルですが、GIGAZINEで記事を作って掲載するというのは数万人から数十万人の前で話をするのと同じです。しかもそのうち99.99%はあなたの知り合いや友達ではないので、何十万人もの人がヤジも飛ばせば、ツッコミも情け容赦なくしてきますし、記事内容が間違っていないのが「当然」であるという大前提で読んでいるため、少しでも誤字脱字していればそれだけで非難の対象となり、なおかつその間違いはどのような事情があろうが基本的に許されず、しかも場合によっては永遠にネット上に記録され、その評判や評価が日々どんどん積み重ねられます。「あのときは~~だったから」などという言い訳をすればより一層ひどく炎上してしまうため、基本的には言われ放題のやられ放題、まさにサンドバッグ状態です。
正しい記事を掲載することが当たり前であって、間違っていれば袋だたき、殴られれば殴られっぱなし、蹴られれば蹴られっぱなし、それがネットに「記事」を書いて載せるということです。
当然、これだけ厳しい環境に身を置いているからこそ、通常では決して得られないようないくつもの実生活で非常に役立つレアスキルがどんどん身につきます。その情報が本当に正しいか?本当かどうか?という裏取りから始まり、誤解を受けないように正確に伝える日本語の書き方、前提知識がなくてもある程度理解できるような展開の仕方、あるいはどのようなターゲットをイメージするのかという仮想読者層の想定、正しい専門用語チェック、ネット上のさまざまな批評や評価に耐えうるだけのものかどうかという自己検証などなど、各種記事作成の基礎がかつてないほどの圧倒的スピード感の中で固められていき、身についていきます。
もちろんネット上に掲載するということはあらゆるメディア、それこそ個人のちょっとした書き込みから大メディアに至るまであらゆるものがライバルとなるので、GIGAZINE以外のあらゆる競合と比較してどのような優位性があるかも企画段階・掲載前段階で詳細に検討するようになります。
しかもネット上では速度も重要なので、締切りに合わせて「どこで見切るか」という決断力も必要です。締切りがなくても速報記事であれば1分とか1秒の差で今まで積み重ねたすべてが抜き去られ、あっという間にそれまでしてきたことがすべてムダ・ゼロ・ボツになることも十分あり得ます。
掲載結果はページビューやネット上での共有結果や評判などではっきりと目に見えてわかり、誤魔化すことは一切できません。
つまり、GIGAZINEで記事を掲載する編集部員になるということは、もうそれだけで必然的に、日々ありとあらゆる能力が強化され、鍛えられ、積み重ねられ、研鑽されることになり、ありとあらゆる経験と体験そのものが、まさに自分の血肉となっていくわけです。
GIGAZINE編集部に来て自分がどれぐらいすさまじい加速度で成長していき、日頃の意識も考え方もモノの見方も世界の感じ方も何もかもが変わっていったかというのは、編集部に来て1年が経過して、1年前の自分の記事を読んだときに痛切に感じることができます。「うおおおお!1年前に書いたこの記事を書き直したいいいい!今だったらこんなあまっちょろい記事の切り口で書いたりしねえええええ!!うわああああああああ!」というような感じで思えるようになれば、それが自分自身の成長度合いを何よりも雄弁に物語っている、というわけです。